アメリカの国立心肺血液研究所で策定された、健康的な食事法としてアメリカでは長く支持されているDASH食。しかし残念ながら日本では、まだまだ認知度の低い食事法となっています。そこで大事なポイントをおさえつつ、完璧に取り入れられずとも気軽にできる、いいとこどり「簡単DASH食」をご紹介してみたいと思います!
- 高血圧症対策から生まれた食事法
- ポイントは3つ!減塩・高カリウム・高食物繊維
- ①減塩食のポイント
- 素材の旨みを上手に取り入れて減塩対策
- ②高カリウム食のポイント
- カリウム制限のある方は要注意
- ③高食物繊維食のポイント
- その他の食物繊維摂取
- 簡単DASH食を長く続ける方法
高血圧症対策から生まれた食事法
日本高血圧学会では、もう10年以上も前からアメリカの国立心配血液研究所(NHLBI)で策定されたDASH食を推奨していて、その効果が認められるという多くの報告から、日本糖尿病学会においても糖尿病治療の一環である高血圧抑制に効果があるとしているDASH食。
しかしその内容が「アメリカにおける食事内容」向けに策定されているということから、日本での食事内容においてはそのままでは取り入れにくいという観点から「パターンの確立は不十分」と脚注を入れています。
ならば、日本向けにアレンジして策定すればいいのでは?と思うのですが、その為には研究機関の選定や費用面等の問題があるのかもしれません。それらのこともあってか?2019年現在、日本高血圧学会による日本版DASH食の策定等は正式には行われていません。
DASH食は、アメリカで「高血圧症対策の食事法」として策定されましたが、高血圧症だけでなく、高コレステロール値改善や糖尿病、肥満などにも効果があるといわれ、多くの方に長く支持されている、近年大変注目されている食事法です。
しかし実行するにあたり、年齢や生活パターンにおける運動量から、総カロリー摂取量を調べたり、食べてもいい食材の摂取量を計量する必要があり、そのわずらわしさから「難しそう」「面倒くさい」となられる方も多いのでは?と思います。
本当に高血圧で悩んでいる方ならばやってみよう!という気になるかと思うのですが、そうでない方が気軽に始めてみよう、とはなかなか思いにくい部分があるのかな?と思います💦
そこで約1年間、実際にDASH食をやってみた私が初期にアレンジしてやっていた、私流「簡単DASH食」をご紹介してみたいと思います。
ポイントは3つ!減塩・高カリウム・高食物繊維
もう、いろいろ考えるのが難しい!面倒くさいのはイヤだ!という方には、この3つを意識していただけたらいいかなと思います。
たったの3つ!これだけなら、今日から、いや今からでも出来そうな気がしませんか?(笑)
DASH食にはいくつかのポイントがあります。
①減塩
②高カリウム
③高食物繊維
④高カルシウム
⑤低飽和脂肪酸
⑥低糖類(砂糖、はちみつ類)
⑦低コレステロール
というものがあるのですが、もうあれもこれも全部を同時に守るのが難しい!という方には、この中で最も重要な3つだけにポイントを絞るという方法はいかがでしょうか。
まずは手始めに、①〜③の3つ!これだけです!
この3つのポイントを意識した食事内容にしてみて、続けられそうな手ごたえが得られそうならば、さらに1項目ずつ足していく、というのはいかがでしょうか?これならなんだか出来そうな気がしてきませんか?
①減塩食のポイント
まず一番に注目したいのが「減塩」です。これは日本高血圧学会でも掲げている、普段の食事において気をつけて欲しいとされている項目です。
日本における調味料でよく使われる塩、味噌、醤油を減らすことで、比較的容易に減塩を実行することは出来ます。しかし、その目標値をクリアすることはなかなか難しいのです(涙)
今年5年ぶりに改訂された、厚生労働省が策定する日本人の食事摂取基準2020年度版において、ナトリウム摂取についての目標量が、昨年までの値よりさらに0.5g減となり、男性7.5g未満、女性6.5g未満(高血圧及び慢性腎臓病患者の場合は昨年とまでと変わらず6g未満)となりました。
お手軽食の代表とするインスタント麺を食べると、塩分摂取量は既に1食で1日分の量を摂取してしまうことに(笑)市販のカップ味噌汁でも1食約2~3g。しっかりした味付けを好んでいると、1食または2食で1日の目標値をオーバーしてしまうことになってしまいます。この値、それまで意識せずに食事をしていた方には、なかなか厳しい数値です💦
私も塩分計を使ってみたことがありますが、やっぱりかなりオーバーした食事をしているなと思いました。
そこで注目したいのが塩分を控える策として、「出汁を効かせる」「薬味を効かせる」という習慣です。旨みを上手く取り入れると、塩、味噌、醤油を減らすことが出来ます。目標値をいきなり守ろうとはせずに、まずは減塩を意識するところから始めてみてはいかがでしょうか?
素材の旨みを上手に取り入れて減塩対策
味噌汁はお家で作る時は「出汁」をしっかり効かせると味噌は少なめでも満足出来ます。カツオ節だけの出汁よりも、サバ節やイワシ粉、いりこ、昆布などを一緒に使うと旨みが増します。
私が普段使っている生活クラブのパックだし。昆布や椎茸の旨みもあってしっかりした風味になります。
また、サカモトのにぼし粉を使うと、濃い出汁になります。粉っぽさが気にならない方は粉をそのまま出汁に使うことで、カルシウム補給にもなります。
また出汁以外の方法としては、汁物を作る際には具沢山にすることで、具材からの旨みもたくさん出て、味噌や醤油が薄くても気にならなくなります。
私のブログではおなじみの(笑)レモスコ。青唐辛子とレモンで作られた低塩の香辛料です。柑橘類や酢などの酸味を使うと、お醤油の使用を減らすことが出来ます。
お刺身やカルパッチョ、サラダ、餃子など、タレやドレッシングの代りに、辛み+酸味をお醤油の代替にして使っています。
有塩バターを無塩バターに切り替えたり、バターをピーナツバターにするのもおすすめです。(写真中央)
ピーナツバターは、砂糖や塩、油脂等の添加の無い、ピーナッツだけで作られたものを選びます。
にんにくや生姜、玉ねぎや青ネギ白ネギ、青しそやみょうが、フレッシュハーブ類(生バジルなど)などの、薬味を上手く使うことでも、塩や醤油を減らすことが出来ます。ゴマやナッツ類をトッピングすることでも風味を増すことが出来ます。
市販のスパイスを上手く取り入れ、調理前の食材に下味をつけておくことで、後からの追い足し調味料を減らすことが出来ます。カレー粉やナツメグ、唐辛子類、ドライハーブ(乾燥)などもおすすめです。
②高カリウム食のポイント
カリウムはミネラルの一種で、細胞の浸透圧を調整し、体内の酸や塩基の平衡を維持し、心臓機能や筋肉機能の調整などの働きをしています。またカリウムは腎臓において、ナトリウムの吸収を抑制して尿への排出を促す効果があると言われています。
カリウムを一つの食材で一度にたくさん摂ろうとしても、なかなか難しいかと思いますので、いろいろな食材から少しずつ色々摂るように心がけると、美味しく豊かな食事を維持しながらカリウムが摂取できると思います。
①果物ならばバナナが代表格。皮も手でむいて食べられますし、携帯もしやすい、手軽に食べれる食材。但し、糖質量が高いので、1日1本まで。
②豆類に多く含まれます。大豆や白インゲン、ひよこ豆、レンズ豆など。納豆にも多く含まれていますが、タレや醤油をかけて食べることが多いので、カリウムの摂取目的で食べる場合はあまり効果が期待できないと考えます。それよりもシンプルに茹でて料理の食材としてちょい足しして摂る方がベター。
③海藻類。サラダや和え物にプラスして。乾燥タイプを使用する場合は、湯戻して使う際には、水溶性であるカリウムが流れ出ない様に、さっと戻す程度にします。
④野菜類では、里芋や大和芋、サツマイモなど、いも類に多く含まれますが糖質量が高いので1食での摂取量に注意。小松菜やほうれん草、おかひじきなど、葉野菜を中心に摂るのがおすすめ。
カリウムは水溶性で煮炊きすると流れ出てしまう特性がありますので、芋類は茹でるよりも蒸す方がカリウムを多く摂ることが出来ます。
カリウム制限のある方は要注意
腎機能が低下している場合など「高カリウム血症」の疾患がある場合、カリウム摂取について制限がある方がいらっしゃいます。その場合はカリウムの摂り過ぎに注意し、摂取量について注意が必要です。
③高食物繊維食のポイント
高食物繊維食のポイントは、主食を高食物繊維食材に置き換えることで、比較的簡単に食物繊維摂取量をアップさせることが可能です。
全粒粉やライ麦のパン、全粒粉パスタなどに置き換えることが出来ます。
パンをオートミールやミューズリーに置き換えたり、白米にもち麦を足したり、白米を玄米に置き換えることで容易に食物繊維摂取量を増やすことが出来ます。
玄米を炊く場合、「浸水時間を長く取ったり、研ぐ際に傷を付け浸水しやすくするようにする必要」があり、それもなかなか面倒だったりするのですが、ロウカット玄米ではその手間が不要です。
浸水も普通の白米と同じく1時間程度ですし、ロウカット玄米は無洗米の様に洗わずに炊くことが出来て、米を研ぐ必要がありません。それでも柔らかめの玄米が(白米とさほど変わらない食感で)炊飯器や鍋で美味しく炊くことが出来ます。
その他の食物繊維摂取
①豆類を多く摂る
②野菜(芋類・葉野菜)を多く摂る
③海藻やキノコ類を多く摂る
④こんにゃくや高野豆腐なども
この①~③のポイントはカリウム摂取とほぼ同じ。しっかり摂って一石二鳥ということですね。
簡単DASH食を長く続ける方法
私が長く(1年以上になります)DASH食が続けられているのは、やはり「作り置き」があると思います。
ほうれん草やブロッコリーは沢山買ってきて、さっと下茹でしてから小分けにして冷凍しておいたりしています。またひよこ豆は、茹ででしまうとあまり日持ちしないので、ピクルス液につけてサラダのトッピングに使う用としてストックしたりしています。
毎回用意するのが面倒な食材については、一度に数食分の量を作り、冷蔵庫でストックするようにしています。
DASH食を始めた最初の頃は、毎回毎回この3つを守るのが大変という時は、今日は2つ守れたからOKにしよう!というゆるいルールにしていました。しかし、そのうちだんだん慣れてくると、あまり面倒ではなくなってきて、じゃあ基本の3つにもう一つ増やしてみようかな?という考えに変わってきました。一度にたくさんの目標を守るよりも、目標は少なくてもよいから確実にクリアできるものから始める、これが長続きする一番の近道かな?と思います。
良いと思う食事法であっても「やらなくちゃいけない」となるとストレスになりますし、食事本来の目的である「楽しんで食べる」喜びが薄れることになり、これでは長続きしなくなってしまいます。
そのようなことがない様、最初は自分でゆるめのルールを作り、まずそれからやってみる、という気持ちで始めてみてはと思います。
私の場合、この3つのポイントを抑えた簡単DASH食を実行するだけでも、夕方の足の浮腫みが治まりヒールがきつくなることがなくなりましたし、食物繊維の摂取が増えたおかげで、長く悩んでいた便秘が劇的に改善することが出来ました。そこからだんだんひとつふたつと効果が実感できてきたことから、こんなに効果があるなら、もう少し一歩踏み込んでやってみよう!という気持ちになれました。
食材の量を計量したり、栄養成分摂取量を計算したりまではしていませんが、まずはこの「簡単DASH食」から始めてみてはいかがでしょうか?