ファスティング中に中程度の運動負荷がかかった場合、糖新生はどのように推移するのか?が知りたくて、不食状態で山登りするファスティング登山をやってきました。中程度の負荷の運動であるなら別に山登りでなくてもよかったのですが、近所をジョギングするとなると、ペースが保てなかったり、しんどくなってきたら根性の無い私は「止めよう」となってしまうので(笑)頂上まで一定のペースで運動を継続することが出来て、しかも途中で止められない(登ったら降りて来なければいけないので)「低山登山」で計測してみることにしました。
- リブレを装着し糖濃度と血糖値の両方を計測
- 昨年のファスティング登山時のデータ
- 今回は「耐糖能改善後」のファスティング登山
- 前回と今回の血糖値を比較
- 帰宅後に食事には玄米150gを食べました
- 今回の数値の全記録です
- 低血糖防止におやつを持参していました
リブレを装着し糖濃度と血糖値の両方を計測
昨年リブレを購入する以前にも、ファスティング状態で穿刺しながら登山したことがある近所の低山(400mくらい)に、今回も愛犬と一緒に登ってきました。
昨年の夏にリブレを着けたらぜひやってみようと思っていた実験でしたが、前回着けたのが8月の最も暑い時。しかも後半、穿刺部が炎症を起こし気味になっていて、低値域の数値が不安定になっていたので挑戦は断念しました。
なので今回ようやく念願がかない、1年ぶりの実験となりました。
愛犬のダックス君と一緒に登ってきました。
頂上までは片道約60分。登山道の約半分が簡易舗装された初心者向きの登山道ですが、前半半分は結構な急傾斜で、20分も登り続けるとじわっと汗がにじみ少し息が上がります。後半は緩やかになり、景色を楽しむ余裕も出てきます。
昨年のファスティング登山時のデータ
昨年の1月はまだリブレを購入していなかった時で、プレシジョンネオで末梢血を30分おきに測って登っていました。(変な登山者ですよね💦)
この時は前夜の夕食後から翌朝の朝食が不食、朝10時の登山開始までの間、約15時間ファスティング状態での登山実験でした。登山開始前の血糖値は82。
この頃はまだ糖質制限をやっていた時で、1日の糖質摂取量は60~80gくらいでした。この頃の普段の空腹時血糖値は80台後半くらいで、登山開始前の血糖値は82でしたから、普段の空腹時血糖値よりは少し低めに出ている状態でした。(糖質制限をやっていた頃の方が、止めた今より空腹時血糖値は少し高めでした)
昨年の登山時の結果からは、登山開始から60分までに、じわじわと血糖値が上がっているのが解ります。何も食べずに末梢血糖値が上昇している状態ですので、糖新生が起こっている状態かと思われます。
頂上についた後も30分くらいは運動負荷によるエネルギーの吸収が続いていると考えられますので、血糖値上昇は95まで上がり、開始から+13mg/dlとなっていました。
当時、糖新生が起こると私の場合、普段の空腹時血糖値より+10くらいになることが解っていました。
糖質制限をやっていたこの頃の食事スタイルは、糖質は夕飯の1食だけでほぼ摂取しているような摂り方をしていて、普段の朝食はコーヒーにMCTオイルを入れたものか、もしくは高脂肪の純生クリームを100~200gと脂質のみ。昼食はバター50gを入れた味噌汁のみ、というような、2食ではほぼ糖質を摂らない様な、極端な糖質制限をしていました。
今思えば、その為に肝臓や筋肉内のグリコーゲンも夕食の1食でしか蓄えられないために、貯蔵量が常に少ない状態であったのではないかな?と思われます。
その為に当時は、普段の食事前(1日3食食べている時)でもケトン体が2~300くらいは出ている状態が常で、運動負荷がさほどかからない状態の時でも、糖新生が起こっていた可能性が考えられました。
また、運動負荷がかかったり長時間のファスティングを行うと、糖新生が活発化するのか、空腹時から+10程度の血糖値上昇が定番になっていました。
山頂についてから子どもに勧められて、休憩時にクッキーを2枚食べたのですが、空腹状態でいきなり食べたもんですから、糖質量はさほど高くない小さなクッキー2枚であったにも関わらず、血糖値が一気に30近く上昇してしまっています。
頂上で子どもや犬と一緒に遊び始めると血糖値は上昇が抑制されて下がり始めましたが、あまりに一気に上昇したので、とてもビックリしたのを覚えています。
そこから下山を始めると運動負荷がかかり、クッキーの血糖値上昇分は直ぐに下がり始めますが、下山終了するとまた再び上昇していました。
登山道の下り運動だけでは、クッキーの分の血糖値上昇分を全て消費することは出来ずに、まだ吸収されなかった「余り」があったのでしょう。血糖値は82と登山開始前と同じ値まで戻りましたが、30分後の計測では再び101まで上昇がありました。
頂上で少し動いたのでクッキーを食べた後のピークは125で抑制されていましたが、動かなければ本当はもっと上がっていたのかもしれません。
この頃は耐糖能が低下していた時期だと考えられるので、少しの糖質でもいきなり高血糖になることが度々ありました。
今回は「耐糖能改善後」のファスティング登山
今回もファスティング登山の条件を出来るだけ前回と同じにして、ファスティング登山計測を行いました。但し、頂上では食事は摂らず、登山を終えて自宅に帰ってきてから食事を摂りましたので、比較できるのは山頂到着部分までです。
ブルーのラインがリブレによる糖濃度計測、赤のポイントが末梢血の計測です。
前回同様、登山開始時点で前夜の夕食後から不食、15時間ファスティング後からの登山開始です。
前回と今回の登山で何が違うか?というと、私自身の「耐糖能」に違いがあります。前回の登山時はまだ比較的厳しい糖質制限をしていたため、今思えば耐糖能が低下していたと考えられ、先にも書いていますように、少しの糖質摂取で高血糖を起こしたり、肝臓や筋肉に蓄えられたグリコーゲンの量が少ない状態であったと考えられます。
その後私は糖質リハビリを行い、1年かけて少しづつ糖質摂取量を増やし、また糖質の摂り方を偏らないように変えたことで、今では耐糖能が改善され、少しの糖質では高血糖を起こしにくくなりました。また、1日のうちでまんべんなく糖質を摂るようになったことで、グリコーゲンの貯蓄量も、以前に比べると枯渇することなくある程度蓄えられているのではないかな?と考えています。
最近の私の糖質摂取量は100~150gくらいで、摂り方も食事1回につき30~50gの糖質をまんべんなく1日3~4回以上に分けて摂取しています。以前のような「夜だけに多く摂る」といった偏った摂り方は出来るだけ避けるようにしています。
【登山開始前】
登山開始前のリブレ値(糖濃度)は76
登山開始前の末梢血は83。リブレ値+7
【登山開始】
今回も保護犬出身の愛犬と一緒に登山。さあ、登りますよ。
登山開始後、リブレ値(ブルーのライン)は76から86へと、すぐに+10に上がりました。空腹時に運動負荷がかかると、間質間への糖濃度吸収がすぐに始まっているように思います。最終的に60分後の山頂到着時には+21まで上がりました。
しかし、末梢の血糖値はほぼ変わっていませんでした。これは前回との大きな違いです。
前回は血糖値が上がり糖新生が行われていると想定されましたが、今回は血糖値に変化なし。登山開始前とほぼ差がありませんでした。
どうやらこれは糖新生ではなく、グリコーゲンからの供給ということなのでしょうか。
【山頂到着】
山頂に到着。3月の小春日和。山頂に到着してリブレ値は登山開始時から+20の97まで上がったものの、運動を止めるとすぐに下降を始め、下山を開始する20分間の休憩で、登山開始前のリブレ値に戻っていました。
前回の登山時の計測では、運動を開始すると徐々に供給を始める糖新生とは違って、グリコーゲンからの供給であるとするならば、すぐに運動を始めるとすぐに供給を開始し、運動を止めるとすぐに供給も止まるという様な状態というような、もの過ごすごく素早い反応なんだな、という印象を受けました。
山頂でのリブレ値は97
ちょっと見えにくいですが、山頂での末梢血は81
【下山終了】
下山後のリブレ値は80
下山の末梢血は75。
前回と今回の血糖値を比較
前回(緑)血糖値は登山を勧めるごとにどんどん上がったのですが、今回(赤)の血糖値はほぼ上昇は見られませんでした。
しかし、今回の間質濃度(青)を見てみると、運動負荷がかかると糖濃度はすぐに上昇し、運動負荷がかからなくなるとすぐに下降し、元に戻っていました。
日常的に適度に糖を摂取するようになると、肝臓や筋肉にグリコーゲンを蓄えられるようになるのでしょうか。1日程度のファスティングではさほど大きな影響もなく、糖新生を起こさずとも補える、不食時の運動負荷分の(ある程度の)エネルギーを蓄えているのでは?というような結果になりました。
帰宅後に食事には玄米150gを食べました
帰ってきてから摂った食事はこちらです。
●鶏そぼろのバジルオイル炒め
●玄米150g
●スクランブルエッグ卵2個分
●ブロッコリー、レタス、パプリカ、ひよこ豆
結構な量をがっつり食べています(笑)不食17時間30分後の食事です。血糖値と間質濃度、共に70台からの食事開始でした。
食後30分後くらいからどんどん間質濃度(リブレ値)が上昇し始めました。不食時間も長いし、でんぷん質である玄米も150gも食べてしまっているし(普段は1食につき100gくらいしか食べないのですが)、これは間違いなく爆上がりで180突破だな…と思ったのですが、140にもいかないままピークが終了し、ピーク後60分後にはなんと空腹時血糖値に戻っていました。その後は測っていませんので、2峰性になっていたかも?しれませんが、ものすごく急速に摂取した糖質が処理されたことは間違いないと思います。
これ、やはり「さっき使っちゃった肝臓と筋肉のグリコーゲンの補充」に回ったんだと言えませんかね?
食事後だけでなく、食前にも運動すれば糖質はちゃんと処理してくれるのではないかなと思える値になりました。
今回の数値の全記録です
リブレ値は結構こまめに測って記録しています。*マーク付きが末梢血の値になります。
食事後のピークも138で収まっていました。前日の夕食後から、登山から帰宅しての昼食までの間、空腹時間は17時間半と長かったのですが、その前に運動負荷をかけ、蓄えられていた肝臓や筋肉内のグリコーゲンを使っていたことが、急激な血糖値の上昇抑制になっていたのかもしれません。
また、玄米を150g食べても、食物繊維やたんぱく質や脂質など、いろいろなものを一緒に食べることで吸収抑制されたこともあるかも。
糖質を摂取し吸収されたものについても、肝臓や筋肉内にグリコーゲンの貯蓄用として回った為、糖の「余り」は発生しなかったのかも?という結果になりました。
低血糖防止におやつを持参していました
今回のファスティング登山を行う際に、実際に持って行っていた非常食です。もし低血糖を起こせば即座に脳や身体に影響が出ますので、急速な糖質補給が必要となります。
今回は自宅にぶどう糖や氷砂糖の買い置きがなかったので(会社のデスクには入れているのですが)、家にあったチョコレート、レーズン、全粒粉クラッカーを持っていきました。でも今回は低血糖なく登山が終了できたので、出番なしでした!
ファスティング中に運動負荷をかける際には、もしもの低血糖対策は必ずするようにしています。何もなければそれでいいですしね。
急激に起こる低血糖は大変危険で、即座に脳に影響を与え、意識障害を伴う場合もありますので、注意が必要です。